耳鳴りには腎を強化する生薬を
耳鳴りについては、現代医学では原因がよくつかめず、根本的な治療法も確立されていないのが実情である。
漢方医学では、五官(鼻・目・口・舌・耳)と五臓には一定のつながりがあると見ており、耳は腎と関係の深い器官と考えられている。漢方の古典『黄帝内経』 には、「腎は耳に通じる」「腎が健康なら、五音を聞き分けることができる」との記述がある。
言い換えると、耳の状態は、腎の健康状態を表しているともいえよう。
この場合の腎には、現代医学でいう腎臓の働き以外に、内分泌(ホルモン)系、脊髄、脳の働きまでをひっくるめた、幅広い意味がある。「腎は精を蔵す。精は髄を生じ、脳は髄の海」という漢方独特の考えによると、腎の精は髄を生じ、脳に集まって耳を養うということになる。そして、病気による消耗や老化による腎精の不足から、脳が空虚になり、耳鳴りを引き起こすと考えている。
腎の衰えからくる虚証の耳鳴りは、ジージーとセミが鳴くような小さな音が持続し、まわりが静かになった夜間など、特に気になるといった特徴がある。この他、眠りが浅い、のぼせ、イライラ感といった陰虚陽亢の症状を伴うこともある。
治療は、腎を強化する補腎薬を中心に用いる。腎の精を補う熟地黄や山シュユなど六味地黄丸の成分に、頭部の興奮を鎮めて精神安定作用のある磁石を加えた、耳鳴丸のような処方を基本に、症状によって他の処方や薬物を加える。